自転車お宝ラーメン紀行 (わたしの旅ブックス) | 石田 ゆうすけ |本 | 通販 | Amazon
この本をぎゅぎゅ〜っと要約するなら…
ググるな! 自分の感性を信じて街を彷徨え! 腹をすかして麺をすすれ!
感想
都内には、まだこんなに昭和風情が残ってたんだと驚いた。
店主の顔が見えて、その心意気が味や店内の雰囲気に表れるのっていいな。石田さんのフィルターを通すと、あたかも自分が昭和の東京にタイムスリップしたような気分になれる。
石田ゆうすけさんの著書は出るたびに読むけど、ほんと文章に引き込まれる。
どれくらいスゴイかというと、数年に1冊読書するかどうかの嫁はんがゲラゲラ笑いながら読む…。それだけでも文章の名手であることが分かるだろう。
この本を読み終えたあなたは、自転車に跨って近所をポタリング(自転車さんぽ)したくなること間違いなし。
僕はさっそくまちの中華屋へ行ってラーメンをすすり一人悦に浸った。味だけじゃなく、店の雰囲気や、お店の人と常連さんたちの世間話すら調味料みたいで胸一杯になる。
心のBGMは はっぴいえんどか吉田拓郎か。石田ゆうすけさんの世界観に影響されまくってる。笑
中華そばだけでなく、時間も食べているのだ
と、まさにその気分になる。
さておき、今まで気にもならなかったが 見慣れた街にも古くからある中華屋が結構あるのだ。
ただ、”一発当てたろ感”のある主張の強いラーメンは往々にして僕には味が濃すぎるのだ。塩分も脂分も強すぎる。東京あたりの行列店は特にそう。つくる側も食べる側も、インパクトを求めて、どんどん過剰になっているんじゃないだろうか。
おかわりしたくなる様な「普段使いのラーメン」こそ、街の中華屋の素朴なラーメンの真骨頂なんだろうな。
ゆうすけさんが、再開発される予定地のフェンスを見て綴った言葉も印象的だった。
…でも、そうは言ってもねえ。どうせできる”まち”ってのはおしゃれなんでしょ。スマートなんでしょ。
「満来」の店主の「ラーメンは200円から値上げできねえ」と言った”不器用”で”粋”な部分、つまり人のかわいい部分は、洗練された新しい”まち”にはあるのかね? そもそも風情ってつくれるものなの?
それと、ゆうすけさんが編集者とスマホのことでやり取りするのも面白い。
ところで先日、20代の編集者と飲んだとき、「えっ、ほんとにスマホ持ってないんですか?と驚かれた。スマホなしでどうやって目的地に着くの? という感覚らしい。彼は僕のこの記事を読んでいて、「ひそかにスマホを使っているだろうけど、そこは触れてはいけない」と考えていたようだ。そんな姑息なことするか! と笑ってしまった。スマホがないと生活に支障が出る時代が来たらわからないが、それまでは持つ気はない。意固地になっているわけではなく、持ってしまうとおそらく僕は読書の時間を著しく失うと思うからだ。
スマホなしで”嗅覚”を頼りにラーメン店を探していく、経過を楽しむ様は 子供のような好奇心を持った旅人。
意外だったのは、ゆうすけさんはノーアポを詫びつつ店主に取材をお願いしている。快く引き受ける店もあれば断る店もある。ただ、断る店の言う事も粋なのだ。
「ああ、ごめんなさいね。ウチは取材断っているんです。お客さんに迷惑がかかるから」
明快だった。取ってから投げるまでが早い名ショートの送球を思わせ、鮮やかですらあった。僕はさわやかな気持ちになって笑顔で答えた。そりゃそうですよねぇ、アハハ。店を出てから、はぁ、と首を垂れた。
取材を打診されて喜ぶ店ばかりじゃないんだ…。
宣伝して、行列できて売り上げアップ!もできるのに、常連さんを大切にするお店 ステキだなあ。芯がある人は魅力的だな。
まとめ
さて、いろいろ書いたけど僕はとにかく石田ゆうすけさんの本が好きだ。
声出してくすっと笑わせてくれる話あり、ホロリとする人情話あり。何より、日常すら「旅」に変えてくれる ゆうすけさんの感性が好きなのだ。
ま、こんな言ってるけど「呼吸数を減らして地球を救うラーメン店」みたいなアホなくだらない(最大限の褒め言葉です!)話が良いんだよなあ。
参考リンク
社会科の授業とは関係なかったけど、世界1周自転車旅行のエッセイは地理など授業で使えるので興味ある方はぜひ! 読み物として面白いので、授業で生徒に読ませています。
笑いと涙とグルメの旅!
今回の紹介本は「dancyu」のWebに掲載していたものを書籍化。無料でこんな上質なコラムが読めるなんて 良い時代になりましたね〜。
それでは、またね〜