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高校教師が地理・世界史での実践をゆる〜〜く更新

『腸内フローラ』 藤田紘一郎

進化の過程において、腸は脳よりも先にできた。

 

だから、腸には数えきれないほどの細菌が暮らしている。

 

腸を元気に保つことで、体調がすぐれ、気持ちも安定するよ~、という本。

 

 

人のカラダというものは実によくできていて、カラダを一定の状態に保つしくみがもともと備わっています。

さまざまな菌に触れることによってきたえられ、腸内フローラがより強く豊かなものになるのですが、現代人の間違った思い込みで必要な菌まで落としてしまい、さまざまな病気やアレルギーのひきがねにもなってしまうのです。

年々深刻化しているアレルギーとは、免疫機能がバランスを欠いて本来無害であるはずの花粉や特定の食べ物が抗原となり、さまざまな症状を引き起こすものです。

現代人は過剰なきれい好きによって、肝心の免疫機能が低下してしまっていると言わざるを得ません。免疫機能はすっかり判断力を失い、また自分とそうでないものとの区別がなくなって自分自身を攻撃してしまいます。さまざまな菌に接触することがなくなった挙げ句、卵や小麦粉など本来無害なものを異物とみなしたり、「自己免疫疾患」を引き起こしてしまうのです。

花粉症やアトピー性皮膚炎は最もよく知られるアレルギー症状ですが、そのほかにも気管支ぜんそく、じんましん、食物アレルギーなどさまざまで、現在、日本では3人に1人の割合いで、何かしらのアレルギーを持っていると言われます。

 

さて、腸内環境はどう育まれていくのかという点も押さえておきたいところです。腸内フローラは、いつ頃、そしてどのように形成されていくのでしょうか。

胎児はお母さんのおなかの中にいる間は菌を持っていません。この世に生まれてきた瞬間から空気を吸い、おっぱいを飲み、さまざまな細菌と接触することで生後1日目から腸内に少しずつ菌を蓄えていきます。

そして三日もたてば、母乳やミルクから善玉菌の代表格であるビフィズス菌や、ラクバチルス菌などが一気に増加します。さらに生後1週間もたてば、乳児のおなかの中はビフィズス菌で満たされた状態になっていきます。

ミルクよりも母乳のほうがお母さんの免疫物質も受け取ることができ、ビフィズス菌の量も多いことがわかっています。そしてお母さんと触れ合うと、自然とお母さんの常在菌が取り込まれて赤ちゃんの腸内細菌の一部になっていきます。

 

こうした外部との接触は、これからの人生において異物に対する「抵抗力」を身につけるために重要です。そのためのスキンシップはとても大切なものであり、お母さんはぜひ赤ちゃんにべたべたと触ってあげてほしいと思います。

産まれたばかりの赤ちゃんを母親の肌と触れ合わせる「カンガルーケア」は、赤ちゃんの体温を安定させるとともに、母親にもリラックス効果があるとして取り入れる産院や病院が多いようですが、菌を獲得するという側面からも大いに有効だといえるでしょう。

とくに未熟児や小さく生まれた赤ちゃんには、お母さんがなるべく触れてあげたほうがいいと私は常日頃から言っています。こうした菌はお母さんから子どもへの大事な贈り物にもなるからです。

その後の赤ちゃんは自分の手足をはじめ、近くにあるものを口に入れてぺろぺろと舐めるようになります。そして自分の手足でハイハイができるようになると、あたりのものを手当たり次第に口にします。

「何かばい菌を口にしてしまうんじゃないかしら……」

と心配になるかもしれませんが実はここが重要なところなのです。

このとき、よい菌、悪い菌に限らず、あらゆる菌に接して取り入れることで免疫を獲得できるため、赤ちゃんは先の章でも紹介した土壌菌をなるべく多く獲得しようとしているのです。これはまさに生きるための本能といえるでしょう。

人の体内の腸内細菌は、生後10カ月頃には、ある程度決まってしまいます。一般的な子育ての目安でいえば、離乳食が定着し、乳離れをした頃といえるでしょうか。

その時点で決まってしまった腸内細菌の組成や種類は、その後大きく変わることはありません。ですからそれまでに、お母さんやお父さんの常在菌をはじめとするなるべく多くの菌に触れて、腸内細菌を獲得したほうがいいのです。

それなのに外部との接触をほとんどさせないように清潔な部屋に閉じ込めて、哺乳瓶を消毒したり、手袋をはめさせたり、外部から来た人にも触れさせないという過保護すぎる育児は、実は子どもの将来にとっては逆効果なのです。

抵抗力の少ない赤ちゃんを衛生的に守ろうとするのは当然ですし、それこそ親心かもしれませんが、必要な免疫が得られないと、アトピー性皮膚炎も含め、さまざまなアレルギー疾患の原因になることもあるのです。

 

ある研究では動物や家畜に触れた経験の多い子どもは、アレルギーを発症しにくくなることがわかっています。ここで動物の例を出すのは少々乱暴かもしれませんが、コアラの赤ちゃんは母親の糞をなめて、腸内細菌を獲得します。コアラの主食であるユーカリの葉には毒性があり、赤ちゃんは消化できません。そこで、母親の糞から腸内細菌を獲得していくのです。これは笹を常食するパンダも同様です。あらゆる動物は糞や土壌、または自然環境から必要な細菌を獲得して成長します。

 

たとえばブロイラーと地鶏を比べると、与えられた飼料だけではなく地面をつついてエサを得ている地鶏のほうが、ブロイラーに比べて土壌菌を豊富に摂取しています。豊富な栄養、そして細菌を得ている地鶏は腸内フローラのバランスがよく、当然ながら卵にも食肉にも栄養が豊富です。

私たち生物は、細菌などのあらゆる微生物とともに生きています。どんな生物もこうしてさまざまな菌を取得し、腸内フローラを豊かなものにしていくのです。

以前に私は、産まれてすぐにアトピー性皮膚炎を発症してしまった赤ちゃんの便細菌の状態を調べたことがあります。

生後赤ちゃんの腸の中では、善玉菌が優位な状態でありつつも、さまざまな腸内細菌が一気に増加していくのですが、こうしたアトピーに悩む赤ちゃんには、大腸菌がまったく見当たらないケースが多くあります。

よくよく調べてみると、腸の絨毛に穴が開いている、先ほど紹介した

「リーキーガット症候群」になっていたのです。何が起こるかというと、通常小さな分孑に分解されてから吸収されるはずの食べ物が大きい分子のまま吸収されてしまいます。その結果、体内に抗体ができて食物アレルギーになってしまうのです。

アレルギーは遺伝ではなく、環境のほうが大きいと私は考えています。

あまりにも過保護な子育ては、子どもをかえってつらい目に遭わせてしまいます。どうしても手をかけてしまいがちな長男、長女にアレルギーが多いというデータもあり圭す。ぜひ生後10カ月までの間は腸内環境を豊かにすることに努めてあげてください。

生後10カ月で腸内細菌の種類はほぼ決まってしまいますが、それぞれの細菌を増やしたり、バランスをとったりすることはその後の生活習慣をよいほうに変えることで可能です。もしアレルギー体質になってしまったら、大人でも子どもでもその改善は容易なことではありませんが、どんなときも腸内をよい状態に保つようにすれば、そのうち体質が変わってくるのです。

 

赤ちゃん時期って、めっちゃ大事じゃん!!

 

続いて、私たちが(ほぼ)毎日お会いするアイツについて、、、

 

毎朝のトイレは、腸内フローラからのメッセージです。

よく見ないで、すぐに流してしまっている人はいませんか?

自分の腸の状態がわかるのは、やっぱりウンコです。ぜひじっくりと色、太さ、形状、硬さ、においなどを確認して、その日の腸の健康をチェックしてみてください。

ここでは健康なウンコ、理想のウンコを紹介しましょう。

まず理想は黄金色。黄色に近づくほど健康な状態です。腸内が酸性で、善玉菌が多いの便です。強いにおいはなくバナナくらいの太さがあります。水分をほどよく含むため、硬さとともにやわらかさがあり、

流すのがもったいないほど、出すというよりは力をまったく入れずにするりと出てきます。いいウンコを目指してください。

 

ここで、今まで紹介の場がなかったオナラについてもお伝えしましょう。

恥ずかしい、困ると思うかもしれませんが、オナラは出るのが当然の生理現象であり、腸がきちんと活動している証明です。

 口から吸い込んだ酸素,窒素も含まれますが、悪玉菌が分泌する1%ほどのインドールアンモニアスカトール、フェノールなど、腸内の腐敗物質からも生成されるため、においが強いときは悪玉菌が優勢な可能性があります。

腸内には10品から、多いと21ほどのガスがたまっています。腐敗が進むほど臭いオナラになりますから、においがきついときは腸の改善が必要な状態だという印です。

強いストレスや寝不足になるとガスがたまりやすく、おなかが張った印象を感じやすくなります。また自律神経失調などの場合もありますから、もしあまりにもひどいときは医師に相談を。食物繊維を摂りすぎても、肉食に傾きすぎでもガスが発生しやすくなるため、バランスのよい食生活を心がけましょう。

 

アイツをそんなよーく見てなかったけど、

 

ばっちいからすぐ流しちゃえなんてもう言えない。

なぜなら、健康のバロメーターだから!

 

さて本書では、腸内フローラが持っている可能性、腸のすごさ、ありがたさ、そして大切さをいろいろな観点からお伝えしてきました。

ぜひ知るだけでなく、次の食事から、そして今この瞬間から

「よしやってみよう」

と前向きに取り組んでほしいと思います。あなたがバランスのよい食事や運動、睡眠、ポジティブな考え方などの生活習慣に気をつけていれば、腸は必ず応えてくれます。ウンコとの付き合いは一生続きます。そしてウンコは平等です。

 

バランスのとれた食生活を送っている高齢者のほうが、不規則な生活でスナック菓子やコンビニフードを食べている若者よりも健康なウンコがもりもりと出るのです。

そして理想のウンコが出ている人は、腸があなたの心とカラダを守ってくれていることを信じてください。

腸内フローラの研究はこれからどんどん進むでしょう。

さあ、あなたの腸内フローラにきれいな花を咲かせてください。

 

 

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Let's make  腸内フローラ