日頃、奥さんが言ってることがこれでもかと語られる。いかに男が無自覚で、能天気に生きているかを突き付けられる本だった。
舞台は韓国で、家父長制の影響が強く、「弟から先にご飯がよそられる」ことや、「弟は新品のものが買ってもらうけど、私は姉のお下がり」のような日常の様子が語られる。
男中心社会、女性は男性と同じ働きしても出世はできず、あげく「どうせ妊娠、出産して仕事を辞めるのだから」と、会社も子育てをする女性を支えるつもりすらない。
親世代より古い人たちは、男の子を産みなさいとあからさまにプレッシャーをかける(そのせいで、妊婦が赤子が女と分かると堕胎させることが多く社会問題となった)。
男性からのセクハラも日常茶飯事…、とにかくそんな韓国社会を(よくある名前の)キム・ジヨンを通して描く。
韓国の話でしょ、とはならず、同じような問題は日本でもあるわけで。
自分も子供が生まれた時、奥さんに「これから一層、子育てと家事手伝うから」と言ったときに、
「あんたの子でもあるんだから、手伝うはおかしいだろ」と一喝されたのを忘れられない。
というか、自分の中に「子育ては母親がやって当然」という価値観があったことがショックだった。
作中で、ジヨンが旦那に「私は出産のために会社を辞め、社会との繋がりも失うけど、あなたは失うものがなくていいよね」みたいに話すシーンがある。
仕事を辞めないにしても、産休からの出産、育休を経て、復帰し子育てと仕事を両立することは女性なら当たり前みたいに思ってしまいそうだけど、僕ら男性はその変化の辛さを他人事として思い、家庭や職場で想像力を持って接することができているのだろうか?
他にもキム・ジヨンがつわりで苦しみながらも通勤する様子とか、日常のささいな描写が生々しく辛い。
これは韓国の物語であると同時に、日本社会に生きる人たちの物語でもある。