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高校教師が地理・世界史での実践をゆる〜〜く更新

【本】『反省させると犯罪者になります』岡本茂樹 著

上辺だけの反省の弁や反省文はいくらでも言えるし書ける。

反省よりも先に後悔がある方が自然じゃない?

「申し訳ございませんでした」なんて誰でもいくらでも言える。

問題行動に至るまでにある生育環境がや親との関係でのしんどさを吐き出させて初めて、自分のしたことを認められる。

まずは正直に、おれは悪くない!相手が悪いんだ!みたいなぶっちゃけたところとことん吐かせてから、自然と湧いてくる申し訳なさを自覚できて初めて相手への申し訳なさも湧いてくるよ、って受刑者の更生に関わっている著者が語っている。

ほんとうに思う!

学校の反省文のなんて茶番。その子たちの抱える背景や心の傷を見るチャンスなんだよね、本当は。

 

・子供の問題行動はチャンスなのです。万引きや喫煙といった腓骨は問題行動ですが、見方を変えれば、しんどい気持ちを「発散」するという側面を持っています。

 

・仕方なく書かされた反省文は、子供の心に様々な問題を残します。

「悪いことをしたら、謝ればいい」と何事も軽く物事を考えるようになることです。

もう一つは、自分のしんどさを受け止めてくれなかった親に対する「憎しみ」を生むこと。

 

・反省文は、反省文を書かされた人の本音を抑圧させている。抑圧は最後に爆発する。

 

・問題行動が起こったときは、まず叱ることをやめて、そこに至った理由に耳を済ませる。そして想いを吐き出させる。否定的感情が全て出ることで初めて自分が起こした過ちに気付ける。

 

・反省して謝るだけだと、なぜ自分が問題を起こしたか考えることにならない。

 

・殺人を犯した受刑者は、「1回目は覚悟して殺害に及んだが、2回目は簡単にしてしまった。」一度経験したことは良くも悪くも心理的なハードルを下げる。

 

・受刑者は単調な日々を真面目に過ごすことで、刑務官に反省の態度を示し仮釈放を早めたい。そんな日々に被害者のことを思い出すのは避けて通りたいこと。

 

・殺人は他者を大切にできないこと。他者を大切にできないのは、自分自身を大切にできないから。自分を大切にできない理由は自分自身が傷ついているから。自分の心の傷について自覚できていない人が、被害者の心の傷を理解できない。自分自身が今までの生育環境でいかに傷ついていたかを自覚するところから始まる。

 

・幼少期に殴られて育った人が、「親から殴られてきたから痛みに強いんです」と言ったが、それは痛みに鈍感になっているだけ。自分の痛みに鈍感になっている人は、人の痛みにも鈍感になっている。

 

・受刑者こそ、幸せにならないといけない。人と繋がって幸せになったはじめて、被害者の命の重みがわかる。

 

・子供時代に「子どもっぽさ」を出せた人は、大人になっても素直な感情を出せる人になる。素直な感情を出せることはありのままの自分でいられることなので他者との間で良い人間関係を築くことができます。

 

・親の価値観に多少偏りがあっても、両親が仲良ければ子どもはよく育つ。不仲であると、「自分が悪い子だから、お父さんとお母さんは仲が悪いんだ」と子どもは考えるようになる。

 

・子供が子供らしくなく大人ぶった振る舞いをするのは危険。子どもは子供らしくわがままを出せるのが良い。子供時代に我慢や抑圧があると大きな問題となる。我慢している様子を見て「小さいのに偉いね」と褒めてしまうと更に抑圧が強化されてしまう。

 

・親なんだから子供の前で弱音を吐いてはいけないと思い込んでいると、子どもは弱音を吐けない人間になるかもしれません。自分の弱さもダメな部分も自然な姿を見せられる親は親自身がありのままの自分を受け入れているということ。

 

・子供が話をしたときに、正論を言うと大人が勝って子供が負ける構図になる。最悪。もう二度と大人に素直に話をしたくなくなるだろう。正論は相手の心を閉ざす「言葉の凶器」。

 

・「沈黙は金」と言う言葉があります。しかし、言葉だ言わなくても分かり合える時代は終わりました。黙っていても相手の気持ちを察することは美徳と考えられきましたが、今はちゃんと自分の気持ちを言葉で伝えていかないと良い人間関係は作れません。

 

・ハンモックと人間関係。

寝床を吊り下げる棚が両端にたくさんあって、しかもその綱が強ければ強いほどハンモックは安定します。人間関係も同じで、太い綱、すなわち人間関係がたくさんあればあるほど人は安定します。たくさん綱があれば仮に2、3本切れても寝床は不安定になりません。しかし綱が少なくて、それらが細い綱であればとても危なっかしいハンモックになります。

 

・弱さを見せることはダメなことと捉えがちですが、弱さは魅力になっているのです。意気がって強く見せようとする人は敬遠したくなります。しかし弱さを出せている人には自然と人が集まってきます。人は誰もが幼さや愚かさや欠点を持っています。幼さや愚かさや欠点を自分自身が受け入れていない人は弱さを見せることは恥ずかしいことと思うので、無理をした自分を演じることになる。そうすると自分自身が疲弊するだけでなく、他者にも無理をしている空気が伝わるので、良い人間関係が作れません。

 

・弱さは財産。今まで生きてきた苦しみ悲しみ寂しさと言ったものから、その人しかない弱さが生まれる。

 

・受刑者に「強い人はどんな人か?」と問うと、たいてい「我慢強い人」「自分の信念を繋げる人」「最後まで粘り強くやれる人」と答える。

我慢強い人→それだけだと爆発しちゃう。

信念を貫く人→他者の意見聞かない人。

粘り強い人→人に頼れないで自分一人で抱え込んでしまう人。

絶対的に正しい価値観はない。「ありのままの自分」をうまく出せる人こそが強い人」と言えるでしょう。しかし、自分の感情に素直になれというのが簡単なようでいて難しいのです。