【本】『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ 著
この本をぎゅぎゅ〜っと要約するなら…
自分のまわりにいる人の(心の)声に耳を傾けようとしている?
感想
教員として出会えてよかったなぁって思えた物語。
52ヘルツのクジラとはーーーー
他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。
たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。
目の前の生徒たちの表面的な言葉・態度だけでなく、彼ら彼女らの「声なき声」に周波数を合わせられてるかと自問する。
今まで関わってきた生徒たちには、気づかなかった(もしかしたら、気づこうとしなかった)つらい日常があったかもしれない。
児童虐待の描写では、親の視点で見てしまうから心が痛む。
愛情を受けて育つことは当たり前ではない。一見「普通に見える親子」も家の中で身体的、精神的暴力があるかもわからない。
主人公 貴瑚が語る、虐待の描写に胸が締め付けられた…
母は昔から感情の起伏が激しい人だった。癇癪を起こして怒鳴った後、泣きながら抱きしめてくる。
(中略)
理由なく怒鳴りつけられ、殴られたことも数知れない。でも、それと同じ分、愛してもくれた。私を抱きしめ『さっきはごめんね』と、『大好きだよ』を繰り返した。
(中略)
優しい匂いと、柔らかな温もりと、頬に感じる熱い涙。それだけで私は何もかもを許せた。
暴力を振るわれても、心の奥底では「親を信じたい」って思うのが子供なのかも知れない。親は、子の純粋な心に甘えてしまい虐待をやめられない。
不幸な依存関係。
デートDVも一緒だろうけど、無条件の愛情を受け取らずに育った子供は「曲がった愛情」であっても求めてしまうってことなのだろう。
それと、貴瑚の母親も苦しんでいるんだろうなと思う。愛を受け取らず大きくなった被害者でもある。
自分は何不自由なく育った。だからこそ、目の前にいる生徒たちに愛情を持って、時には辛さを分かち合えるような人間でいたい。
「私は恵まれてたんだなあって思う。母以外にもたくさんのいい人に出会えたから、今笑って生きていられる。だからさ、私もせめて、いい人になりたいな。この子が大人になった時に笑って生きていられるための、いい人になりたい」
貴瑚の友人 美晴の言葉だ。
教師として子供たちにとって「いい人」になりたいと思った。
まとめ
最後に、この本で最も好きな貴瑚の言葉で締める。
そして、わたしもこの子がしあわせになるためのひとつのパーツになれたらいいと思う。
自分もここまで成長するのに、親だけでなく先生、友達、親戚、近所の人、同僚、バイト先の人、旅で偶然出会った人、本の中の登場人物…数えきれない人たちのおかげで毎日楽しく過ごしている。
次は自分がそんな「誰かのしあわせのひとつのパーツ」になれたらいい。
52ヘルツで鳴く声に周波数を合わせられる、心の余裕を。
とってもいい本に出会えてよかった。
それでは、またね〜