【本】『教養としてのデニム 日本人が見出したヴィンテージの価値』藤原裕 著
デニムに興味を持ち始めて手に取った本。
歴史あるデニムなら、社会科の授業にも生きるはず!ということで、社会科の教員なら何でも教材研究になるから“役得”かな。
デニムとは?
そもそもデニムって何なのでしょう?
デニムの語源は、フランス語の「Serge de Nimes、セルジュ・ド・ニーム」(ニーム地方の綾織物)という言葉が現在の「デニム」の語源になっています。
フランスの南部は温暖な地中海性気候であり、19世紀当時綿花などの栽培も行われており、自国内や海外への綿製品の貿易も盛んに行われていました。特に港町マルセイユに近い「ニーム」地方がちょうど日本の瀬戸内地区のような温暖な気候や立地条件のもと、織物生産地として力を増していました。
(『デニム』と『ジーンズ』の語源って??のブログ|NO LIMIT FACTORY:広島県福山市 より引用)
いまやアメリカが発祥というイメージがありますが、もともとはフランスのものなんですね。
デニムの発展 in アメリカ
1840年代にカリフォルニアで金鉱が見つかり、人々が一攫千金を求め西海岸に大挙し押し寄せた、いわゆるゴールドラッシュ。この時、近郊で働く人々が好んで履いたのがデニムパンツ。
タフな仕事に耐え得るやぶれにくいズボンを一攫千金の夢追い人が身につけていたのです。
その販売をし始めたのは、ドイツからの移民リーバイ・ストラウスでした。テントなどに使われていた素材を用い、インディゴ染めをしていました。
デニムパンツにインディゴはなぜ使われていたのでしょうか?
理由としては、汚れを目立たせなくすることと、ガラガラ蛇が嫌う成分(ピレスロイド)が入っていたことだと言われています。
(今のデニムのインディゴにはピレスロイドは含まれていません)
リベットの”発明”
ワークパンツの弱点だったポケットのほつれに、リベットを打ち込むことで補強ができるようになりました。ちなみにリベットとは、ポケットに付いている金具。
言われてみれば、なんでこんな金具が付いているか疑問にも思わなかったなあ…
このアイデアは、ヤコブ・デイビスが発案し、1873年にリベットのついたデニムパンツが完成。これをもって、リーバイスが誕生したと言われている。
1890年にロットナンバーとして初めて「501」が商品に付けられました。当時はベルトループが無く、サスペンダーボタンとシンチバック(ベルトが普及する以前にあった、腰回りを締めるための調整バンド)があったものでした。
デニムハンター
デニムハンターとは、鉱山の跡地に入り昔のデニムを発掘する仕事。いわゆる“炭鉱系”と呼ばれるデニムは、1800年代後半のも見つかることがあるみたいで、ウン100万円の価値があると言われています。
アメリカの田舎町で、家の解体作業をしていたら壁からデニムが出てくることがあるみたい。それはなぜか? 寒冷地では、断熱材や緩衝材として壁と壁の間に押し込むという習慣があったためです。
Gパンの名前の由来
終戦後に来日したGI(goverment issue+=米軍兵士)がひてたパンツの略とされています。
ちなみに、デニムと戦争は切っても切れない縁で、リーバイスには“大戦モデル”と呼べれる人気のモデルがある。
これは、1942年〜45年にだけ製造されたもので、ヒップポケットにはペンキでアーキュエイト(お尻のポケットについてるカモメみたいな刺繍)。物資統制のために、金属をできるだけ使わない仕様になっているなど、アメリカの世相が反映されています。
日本のデニム
1970年台後半より、原宿渋谷界隈で生まれたヴィンテージデニムブーム。
それまでの古着とは違ったアンティークという価値観を吹き込んでいったのは日本人だったよう。
生地の破れ、色落ちなど … いまでこそ市民権を得たと思うけど、こういうのに価値を見出すのは日本人ならではだと著者は言っています。つまり、”侘び寂び”に通ずる日本人独自の感性だ、ということです。
岡山にデニムブランドが集中してるのは?
今ではMade in Japan のデニムは世界で評価されています。それには背景があって、岡山では江戸時代中期より藍の栽培や染色をしている。これは、温暖で雨が少ない瀬戸内海沿岸の気候がもたらしたものです。
干拓地で土壌に塩分が含まれ、米の栽培に適していないため綿花栽培が行われたという特徴もあります。
1950年代は学生服の生地が綿から、ナイロンなど合成繊維に代わっていって、学生服の生産が減少し地域産業にピンチが訪れました。
そこで突破口としてデニム作りに力を入れていき、いまでは高品質のデニムが岡山で作られ世界中にファンがいるのだ。
まとめ
デニムに興味を持ち始めたのは、地理総合の教材研究で「ファストファッションはなぜ安く服が作れる?」を調べ始めたのがきっかけです。
デニムは、色落ちさせるために何回も洗ってから出荷する(最初から白っぽかったり、薄い青だったりのものは洗ってある)。
また、原料である綿花の栽培にも大量の水を使用する。
そのため、ジーパン1本生産するのに約10,000リットル使用すると試算することもあります。
10,000リットルざっくり、お風呂桶 50杯分!?くらいかな。
浴槽のリットル:湯量について解説|浴室の取替・交換工事なら住設ドットコム
みんな必ずと言っていいほど、ジーパンは持っているし日常的に履いています。
本来、ジーパンは労働着なので頑丈で長く使えるはず。
しかも、色落ちなど経年変化も楽しめて、使い捨てではなく長く愛用できるサステナブルな服だと思ったのです。
逆に言えば、安いジーパンを何着も買って捨ててを繰り返すことは、環境にとってものすごい負荷になるのだと知りました。
デニムを調べていくと、持続可能な生活や、環境問題、アメリカの歴史、はたまた岡山の地理的特徴など … 様々な切り口があって授業にも活きていくのではないかな〜と思ってます。
それでは、またね〜